Social Good Company #11: シチズン

115E0940-E7B3-4388-9E48-F0799F3E745Cエンゲージメント・ファーストでは、Social Goodなお取組みを行う企業・団体の皆さまを対象として、独自の選定基準により、「Shared Value ベスト・プラクティス」として表彰をさせて頂いています。
この度、シチズン時計様とプラン・インターナショナル様とが進めるコーズ・リレーティッド・マーケティング(以下、CRM)のお取組みを選定させて頂きました。

日本を代表する時計メーカー シチズン時計(以下、シチズン)は、2013年より、プラン・インターナショナル(以下、プラン)が進めるBecause I am a Girlキャンペーンのコンセプトに賛同、クロスシー売上の一部をプランに寄付し、途上国の支援をしています。その起点となったのは、「13歳で結婚。14歳で出産。恋は、まだ知らない。」のコピーをしっかりと受けとめた、シチズンの女性社員たちの強い想いでした。
シチズンがプランと進めるSocial Goodな取組み、是非ご覧下さい。

【インタビューにご協力頂きました皆さま】
シチズン時計株式会社 常務取締役 営業統括本部長 竹内 則夫 様(左)
公益財団法人 プラン・インターナショナル・ジャパン 事務局長 佐藤 活朗 様(右)

●両者では、CRMで連携し、途上国の女の子や女性を応援する取組みをされています。
「Because I am a Girl」賛同について:シチズン クロスシーは、Because I am a Girlキャンペーンに賛同し、世界の女の子・女性たちを応援します。:http://citizen.jp/product/xc/girl/index.html
プランの活動:https://www.plan-international.jp/
シチズン:5年前のある日、弊社のCSR室のある担当者の女性から、一度話しをしたいと連絡がありました。彼女からは、サステナブルな企業姿勢を示すことや、CRMへの取り組みの重要性に関する話があったのですが、その中にはCRMについての具体的な提案も幾つかありました。その内の一つに、プランさんにクロスシーを通じてご協力するというアイデアもあったのです。
その時には、私は彼女がソーシャルの意識が非常に高く、そうした提案の為に、休日にも関わらず、個人的にプランさんに出向いて意見交換をしていたといったことは、何も知りませんでした。ただ、私の中ではその話を聞いた時にピンと来るものがあって、是非進めて行こうと思いました。女性支援に関することですから、社内の女性達が積極的に共感してくれることが重要だと思い、まず彼女達に意見を聞き、また社外の方のアドバイスも受けながら、最終的に決定しました。

●この取組み自体、検討からスタートまで、両者でスムーズに進んだと聞いています。
プラン:一般に、企業が私たちのWebサイトを見て、プランは企業と連携しているらしいから、話を聞かせて欲しいといった問い合わせが多いんです。でも、シチズンさんの場合は、最初のコンタクトから、極めて具体的で私たちの取組みとも一致する提案がありました。そうしたケースは非常に少ないんです。
シチズン:私が、Because I am a Girlの電車内広告に既に気づいていて、強く共感していたということもありましたが、世の中には、CSVの流れもあり、こうした事を取り組まないといけないという考えもありました。また、「市民に愛され市民に貢献する」というシチズンの企業理念からも、そうした団体との連携が全くないのもおかしな事です。そうした考えや準備があったところに、女性担当者が話を持ってきてくれたらこそ、スムーズに進んだと言えます。

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●シチズンさんはWebサイトでも経営者自らがCSVを打ち出しています。
シチズン:部下の女性社員達の考えを確認した上で、社長の最終決済を仰ぎましたが、そうした価値観は社長とも共有できていると思っていました。細かな説明をしなくてもご理解をして頂き、こうしたことはやらないといけないといったことで決定しました。
販売のサポートに繋がることも説明をしましたが、勿論はっきりした根拠があった訳ではありません。でも、一週間程度の検討で実施を決定出来たのです。プランさんの活動が素晴らしいからこそ、そこに賛同し決断できたのだと思います。

●全く新しい取組みをこうしたスピード感を持って進められたことは素晴らしいことです。
シチズン:虐げられた環境に置かれている、なぜなら女の子だから。そういう子ども達を私たちは救いたい、なぜなら私たちも女の子だから。理屈では無く、直感的に許せないから。そうしたメッセージがBecause I am a Girlというフレーズには凝縮されている、そんな言葉に心を打たれました。
プラン:Because I am a Girlキャンペーンは、2012年から本格的にスタートしています。プランでは、それ以前から子どもたちの支援をして来ましたが、もっとアピールする必要がありました。
当時は、何で女の子だけ? 男の子はいいの? といった意見もありました。国内でのジェンダーの問題等、日本は遅れています。もっと広めたいという考えがあってスタートしたところに、シチズンさんからの提案がありました。
こうしたキャンペーンを進めるにあたっては、いつもどれだけ反応があるのか、本当に受け入れられるのか、そうした不安の中でスタートしています。
私たちの意図していたことを企業にきちんと理解して頂けたのは、本当に嬉しかったし、元気づけられました。しかもこのCRMは、女性向けの商品ですから、その点もマッチしました。個人の支援者の方々や様々な団体の方々もいらっしゃいますが、その中でも企業は非常に重要でポテンシャルのある理解者であると考えています。

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●こうしたプロモーションを進めることによって、シチズンさんの社内での反応は如何でしたか?
シチズン:クロスシーのブランドは、仕事を持ち、社会的な事にも意識が高い女性をターゲットにしています。
おしゃれもする、ファッションも楽しむ、トレンドにも敏感、一方で、きちんとバランスをとって、こうした社会的課題にも関心を持っている、そうした女性にこそ私たちの商品を身につけて頂きたいという想いがありました。
最初にCRMの取組みを社内で話をした時は、男性社員を中心に。あまりポジティブではありませんでした。なぜ男の子は対象ではないのか?女の子にフォーカスすること自体が差別ではないか?といった意見もありました。
そうした理屈を言い出したら何も出来ない。女の子の写真を見て、これ許せないよね、といった事を思うのが重要なんです。優先順位の話をしたら何も成立しないと思います。

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プラン:シチズンさんには、4年間で6つのプロジェクトを支援して頂いています。それぞれのプロジェクトが非常に困難な国やテーマが多いんです。パキスタン、マリ、ネパール、ガーナ、マラウィ等、プランの支援先でもより状況が困難な国を選んで頂いています。テーマも女の子の教育支援、早すぎる結婚対策、月経衛生管理、理数科学力向上、生計向上等、その国でニーズが高く、チャレンジングで先駆的なプロジェクトです。
NGOも企業と同様に、その国を分析して、最適な手段は何かを判断していますが、企業との連携では、スピード感やダイナミックな動き等、学ぶべきことも多いんです。企業との連携は、1+1が2以上になる有効な取組みです。

●団体の活動全体に寄付するのではなく、寄付先の活動や国の選定もシチズンさんが決められているんですね。
シチズン:プランさんに説明を頂きながら、支援先を毎年両者で検討しています。支援先の検討は、私たちの学びにもなっています。
プラン:私たちは、世界50カ国以上の国々で、現場のニーズを調べ、何をすべきかといった計画を立て、それぞれの国を支援しています。また、企業には、企業として何を進めたいのかをヒアリングします。それらを照らし合わせて、支援による効果も示しながら、支援先や内容を決めていますので、オーダーメイドと言って良いかと思います。
パキスタンでの女の子の教育支援も山奥での先生の確保が難しい。先生も生徒も男女が別れていて、女の子を教えるのは女性教師の必要がありますが、そうしたこともやり遂げています。地元の長老にも女の子にも教育が必要であることをも説得して実現しています。識字率の向上や衛生教育が必要であることを理解してもらえれば、周囲の村にも広がっていきます。
支援内容も学校を造ったりするハコモノ支援にこだわる企業も少なくない中で、シチズンさんはソフト面を重視して支援を頂いています。学校を造る前にどんな教育を実現したいのかを検討することが重要で、設備は一番最後に決めることです。

シチズン:寄付することによって自己満足で終わってしまうことは企業としても避けたいし、するべきではないと思っています。その社会にとって意義あることをしなければ意味がない、そうした点でもプランさんの取組みは実践的です。

 

●こうしたCRMの取組みを進めることによって、シチズンさんのビジネス成果はいかがでしたか?
シチズン:どこまで効果があったかを測定するのは難しいのですが、最初に自社で運営しているSNSで反応がありました。
また、インターネットを通して、アンケートも実施していますが、こうした取組みを行うクロスシーだから、購買の対象になるといった意見もありました。この様な支援に繋がるのであれば、クロスシーを選びたいといったコメントも頂いています。クロスシーが提供するラジオ番組の中でも「Because I am a Girlのキャンペーンを私たちは応援しています」と言ったメッセージを流していますが、その番組を通して、改めてシチズンのそうした活動を知った等、多くの声を頂いています。
キャンペーンを進めるにあたっては、クロスシーを道徳的なブランドにするつもりは一切ありませんでした。ファッションブランドお洒落な女性にとって、ファッショナブルなアイテムとして成立することが最も重要です。もちろん店頭での小さなPOPでの展開はしていますが、ことさらそれを訴求はしていません。でも結果として、店頭やSNS等での気付きに繋がり、購入選択で、最終的シチズンを選んでくれたということがあれば充分効果があったと考えています。
クロスシーのWebサイトにて活動報告を掲載しており、アクセスして見てくれている方もいる、そう意味では、当然効果があったと考えています。
プラン:仕事を持ち、おしゃれもして前向きな女性というイメージの話がシチズンさんからありましたが、Because I am a Girlでイメージする女性ととてもマッチしています。
かわいそうだからお恵みをという話ではありません。女の子は全ての可能性を持っている、でもそれが活かされていないのはとても残念、だから何とかしたい、こうした発想です。本来、女の子は元気で色々な可能性を追求する存在であるはずなのにといった事とメッセージが共通してます。
途上国と先進国では、置かれている環境も異なりますが、本質的には変わりません。かわいそうではなく、花開いて欲しい、背中を少し押してあげたい。そうした想いを持って取り組んでいます。
私たちの支援者も、働く女性はとても反応が良くて理解も早い、恐らく、自分事として考えられるのでしょう。途上国の圧倒的な男女の格差を何とかしないと皆が幸せになれない。ゼロサムゲームではありません。女の子が元気になれば、みんなが元気になれる。こうした世界を目指しています。

●ターゲット層の話がありましたが、私たちの独自の調査でも、Z世代と呼ばれる若者層の社会課題への関心が高いという結果が出ています。
シチズン:バブル期の世代とは意識が異なっていることは実感しています。高度成長期ではないときに子ども時代を過ごしているため、地に足が付いているというか、そうした視点は持ち合わせている方が多いように感じています。
提供しているラジオ番組でも、10代~20代のモデルや女優の方がパーソナリティを務めています。視聴者も10代、20代の層が多いので、そうしたメッセージに賛同してクロスシーが好きになったという反応も頂いています。定量的には検証できませんが、そうした層の方々へメッセージは届いていると思います。
●シチズンさんの社内での理解も進みましたか?
シチズン:CRMを進めたことにより、社内の理解も深まってきていると思います。社内でプランさんの映画上映会をしましたが、就業後にも関わらず、多くの社員が参加しています。また、プランさんに会社に来て頂いて、支援活動の年度報告も実施しています。
プラン:こうした企業での報告会では、CSR関連部署の方を対象に開催することが多いのですが、シチズンさんでは様々な部署の方に参加して頂いています。色々な方々に関心を持って頂いていることは、本当に有り難いことです。
CRMがうまくいくケースというのは、商品や顧客層とキャンペーンの親和性があることや企業風土等、いくつかのポイントがあると思いますが、私は次の3点が重要であると考えています。一つ目は、社員の皆さんのコミットメント、二つ目は、社内の異なる部署間でのコミュニケーション。もう一つは、経営のリーダーシップであると思います。シチズンさんの場合は、この三つが見事に揃っていると言えます。

●こうしたキャンペーンに共感してクロスシーを買った顧客さんは、他のブランドにシフトしにくいと思います。
シチズン:そうあって欲しいですね。しかし、もともとクロスシーは、比較的リピーターが多いブランドであると言われています。
プラン:私たちにも、一般の方から、プランと連携しているCRMの商品は他にないのかといった問い合わせがよくあります。
まだまだCRMの取組みは少ないのですが、チョコレート等、他にも同様の商品があれば購入したいといったコメント頂きます。今は、CRMを理解し、参加したいという消費者に対して、受け皿が十分ではないと言えます。

●弊社の調査では、社会課題解決型の商品をもっと企業はアピールすべきとの結果も出ています。
プラン:企業の方も少し遠慮していて、非常に日本的かと思うのですが、欧米の企業は、寄付していることも含めて、積極的にアピールしています。

●シチズンさんが署名するグローバル・コンパクトが積極的に進めているSDGsへの取組みにも、欧米企業はうまく活用し自社をアピールしています。
シチズン:弊社では、シチズンLというシリーズがありますが、環境配慮をコンセプトに商品開発をしています。しかし、そのことだけをしている訳ではありません。

04-1000x637●エシカル・ウォッチといった商品カテゴリーは他にはありませんので、競合他社との差別化に繋がりますが、社内の理解はいかがですか?
シチズン:営業部門はやはり販売計画があるため、どうしてもデザインや価格が優先されてしまいます。しかし、今の時代、そうしたエシカルといった商品コンセプトが特別なアイコンになることは、若手社員を中心に理解が深まっています。
こうしたことを全社的に自分たちの営業活動やスタイルに醸成させるのかは、今後の課題です。店頭での販売員まで伝え理解して頂くとなると、もう少し時間も掛かるかもしれません。そうした意識に対する日本全体の社会の底上げがまだ出来ていませんので、すぐに売上に繋がらなくても、将来は会社に貢献するということを、会社の共通理解として捉えられれば良いかと思っています。
●世の中の流れとして、サステナブル経営やESG重視の方向性に間違いはありません。
プラン:今の若い人達にはとても期待しています。最近の高校生や大学生は、色々なことに興味を持っていますし、行動力もあります。そして、なぜか女性の方が総じて元気です。
そうした意味でも、商品の販売を考えた時に、若い人達が購買力を持つまでには少し時間が掛かります。その期間のアドボカシーというか、働き掛けを行うのが、私たちプランの役割とも考えています。日本企業も慎重に議論を進めるため、なかなか変化しませんが、変えるとなったら早い、そうした企業の力に期待したいし、長期的には楽観視しています。

●先程のLシリーズですが、カーボン・フット・プリントの認証も受けています。認証を受けるには手間もお金も掛かると思いますが、そこまで踏み込んで取り組んだ理由は何ですか?
シチズン:女性の商品企画担当者からの意見でスタートしています。クロスシーは、国内のみで展開しているブランドのため、世界的な女性ブランドの展開がビジネス面からも求められていました。Lシリーズは「Beauty is Beauty」をコンセプトとして始まったブランドですが、現代における「Beauty」とは何かを考えた時に、エシカルといったキーワードが出ました。
商品企画や環境管理部門等、社内のキーとなる人たちが積極的に動いて、カーボン・フット・プリントの取組みも実現しました。工場との連携や書類の整備等、大変でしたが、やり切ることが出来ました。社内で情熱を持った個人が必要であることを実感しています。
プラン:私たちも色々な企業さんとのお付き合いがあり、担当の方が変わると取組み自体も消極的になったりすることもないわけではありません。シチズンさんは、そういうことがなく、社員の方一人ひとりのコミットメントが強いのだと思います。
シチズン:最初の取組みを受け継いで、自分事化できる女性が継続して担当しているのが強みですが、シチズンLもその想いが引き継がれていると思います。

●鉱物資源への取組みも積極的に打ち出してします。エシカル・ウオッチのビジネスの成果としてはいかがですか?
シチズン:鉱物資源等の取組みは、会社方針としてやり続けていたことでしたので、何か新しいことをしたわけではなく、世の中へ伝える内容を整備したということです。シチズンLの売上も徐々に上がっていますし、継続して進めることを決めていますが、その成果は出ていると思います。

●エシカル・ウオッチとしての競合はありませんから、浸透すればするほど、そのブランドも強みになります。
シチズン:エシカルだけを訴求するのではなく、商品そのものの良さや価値も伝えていきたいと思います。
根底に、私たちはこうしたことを伝えるブランドなんだというものを持ったときに、それはブランドの個性に変わる、そして、他社との圧倒的な差別に繋がると思います。成果への貢献が、エシカルなのか、デザインなのか、広告表現なのか分かりませんが、ブランドの個性になっていることは明らかです。
プランさんの活動は、とても実践的で、具体的で現実的です。地域やテーマに沿った活動をされていますが、その計画やプロセスがきちんとされています。解決するための具体策がきちんとしていることを実感しています。

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●最後に、企業とNGO/NPOの連携や、今後の展望等をお聞かせ下さい
プラン:企業さんとの連携には様々な可能性がありますが、その一つとして、SDGsは、企業とNGOとが一緒に取り組む良い機会になると思っています。NGOだけでは実現できないことでも、企業と連携することでできる様になる、今は、SDGsの達成に貢献するという、絶好の機会が来ていると思っています。
それには、NGOとしても支援の質を高めていく必要がありますし、また具体的なアイディアはこれからですが、もっと企業に対してイノベーティブな提案を行う必要があると考えています。
シチズン:資本主義社会ですからそこにおいて企業は利益を追求する必要があります。しかし、貧困や差別等、資本主義をこのままの在り方で続けていけば、先がないことは、皆が感じている事だと思いますし、企業経営者もこのままではいけないと思っているはずです。
より実践的に結果を出して世の中を良くすることはみんなで考えないといけない。法令等で他律的に進めていくことも必要ですが、企業が半歩ずつでも自主的に前進していくことによって、もっと良い世の中になると信じています。
企業は重要なセクターであり、企業が変わらないと世界も変わらないと思っています。

●本日は貴重なお話を頂きまして有難うございました。
みなさま:ありがとうございました。

■コラム執筆・インタビュアー
エンゲージメント・ファースト 萩谷 衞厚

 

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