Social Good Company♯28:テーブルクロス「レストラン予約による継続的な社会課題解決の実現」

グルメアプリの予約を通して、途上国の子どもたちへ給食支援を行うテーブルクロス。それは、社会課題解決の継続的な仕組みの確立と持続可能な事業との両立でした。

今回は、立教大学三年生の時に会社を立ち上げた女性起業家、テーブルクロス 城宝社長にお話を伺いました。

  • 創業5年目で、22万件以上の給食を支援
  • 最近は、訪日外国人向け体験型アクティビティ予約サービスを開始
  • 目指すは、食に関するプラットフォーマーとしてのグローバル展開
<インタビューにご協力頂いた方> 株式会社 テーブルクロス代表取締役 城宝 薫 様

プロフィール:高校一年生の時に、親善大使としてフロリダ州オーランドへ短期派遣、立教大学へ入学後は、企業と提携して新商品開発を行う学生団体「Volante(ボランチ)」を創設。大学 3年時に、株式会社 テーブルクロス を設立。社会貢献型グルメアプリを2015年3月リリース。2018年11月からは、訪日外国人向け 食に関する体験アクティビティ予約サービスを提供。2017年 グローバルEY主催「世界の女性起業家」に選出。

●テーブルクロスさんが提供するグルメアプリの概要を教えて下さい。

テーブルクロスは、社会貢献ができる無料のグルメアプリを提供しています。

ぐるなび、食べログ、ホットペッパー等の飲食店検索サービスと同様、飲食店の情報を提供していますが、テーブルクロスのアプリを使って飲食店の予約をして頂くと、クーポン付きで美味しい食事が出来るだけではなく、予約した人数分の給食が途上国の子どもたちに届けられる仕組みになっています。

お店の情報を飲食店検索のサイトに掲載すると、通常は初期費用や月額利用料等が掛かりますが、、弊社の場合はそうした費用が一切掛からず、予約人数に応じた、成果報酬型の運用を行っています。

他に、CSVを積極的に進めたい、SDGsに貢献したいといった飲食店の方々には、個別にコンサルティングサービスを有料で提供しています。

金銭的な負担は一切ありません。飲食店の方から情報掲載の申し込み後、1週間以内にお店の情報を掲載していますが、ページの制作も弊社が行います。

●飲食店の情報を掲載しようとすると貴社の制作や管理等の作業が発生するかと思いますが、飲食店は無料ですか?

金銭的な負担は一切ありません。飲食店の方から情報掲載の申し込み後、1週間以内にお店の情報を掲載していますが、ページの制作も弊社が行います。

●こうした、社会課題解決型の事業をスタートしたきっかけをお聞かせ頂けますか?

最初のきっかけは、小学校の時に家族旅行で訪れたインドネシアでの経験です。幼い時に初めて家族と海外海外に行って、国が違うってこういうことなんだっていう事に気付いたんですね。自分と同い年位の子どもたちが、学校にも行かず、ゴミ山からモノを拾ってお金に換えたり、食べ物を拾って食べたりするのを初めて見て、その時に衝撃を受けたことからスタートしています。

かわいそうだなという以上に、自分がすごく幸せだったんだなということに気付いて、それ以来、私は寄付やボランティアをする事が好きになっていったというのが最初の原点としてあります。子どもの頃から、赤い羽根の募金とか、近所のゴミ拾いの活動に積極的に参加していました。また、2009年 高校一年生の時に、親善大使として短期でアメリカに派遣される機会がありました。

●アメリカではどんな経験をされましたか?

アメリカを訪れた時に初めて、まさにCSVの考え方と出会いました。アメリカでは、障がい者支援を行う現地のNPO団体の打合せに参加しましたが、どうやって寄付やボランティアを集めるかという話し合いが行われると思って、打合せに参加したんです。

しかし、会議の内容は、自分たちの団体としての価値は何か?どんな価値を社会に提供すれば対価を得られるか?、つまり、売上や利益を上げるために、自分たちの価値をどう社会に提供するか、という言う議論が行われていたんです。

社会貢献を行うNPOの団体が、なぜそうした議論をするのか理解できず、「なぜ寄付やボランティアを集めないのか?」と質問しました。

すると、「あなたの周りには、障がい者の問題の他に、過疎化やシングルマザー等、色々な問題があるでしょう。そうした問題を寄付とボランティアで解決できたら誰も苦労しないと思わない?」という回答が返ってきました。「社会問題は、単発のイベント等では解決できないからこそ、それに気付いた人の本当の役割は、継続的な仕組みを作ることなんだよ」 って、その時、自分の中で腹落ちしたんですね。

自分は途上国の子どもたちを見て、寄付やボランティアも大好きになったし、自分にできること何でもしようって言う想いで取り組んでいたのかもしれませんが、そうした事ではなく、仕組みを作ることが重要であることを理解しました。

●NPOの活動原資は、寄付やボランティア、助成金といったイメージがあります。

日本では確かにそうかも知れません。しかし、利益をきちんと生み出しながら、社会貢献をしていくって言う考え方こそ日本で浸透させていかないと何も変わらないということに気付いたこと、その時が自分の中でやりたいことが見つかった瞬間と言えます。

私の祖父が起業家のため、以前から将来起業しようと思ってたんですけど、解決するための考え方やコンセプトはその時にクリアになったと思います。社会貢献を進めながら会社作りをしようというミッションが決まりましたが、どんなビジネスをして、利益も出しながらどう進めていくのか、大学に入ってもずっと考えていました。

●先程のアメリカの障がい者支援団体は、会議の中でどのような結論に至ったのかとても興味があります。

短期の派遣でしたので、詳しい内容までは把握できませんでしたが、例えば、アメリカの飲食店では、売上の一部をNPOに寄付する取り組みが積極的に行われています。外食するなら、少しでも良いことが出来る様お店に入ろう、そう考える人がもっと増えれば、飲食店の売上にもつながるし、良い循環も出来ると感じました。

もともとアメリカ人は、寄付へのマインドが高いので、お店の協力も得られやすいのでは、といったことを話していました。こうしたお店が、売上の一部をNPOに寄付するといったPRは日本と比べて海外では多いと思います。

●その後、テーブルクロスを立ち上げたのは大学在学中ですね。

高校から大学に進学し、人生最初のアルバイトが、飲食店向けに広告を営業する会社でした。その時に、その業界の事を詳しく知りましたが、飲食広告業界は将来変わっていくだろうと感じました。

具体的にはどの様なことを感じましたか?

飲食広告業界は、食べログ、ぐるなび、ホットペッパーの3社が独占していました。2013年当時、私の感覚では、少し前の携帯キャリア業界と同じだなと感じたんです。今、携帯キャリアは、格安SIMのサービスがスタートし、価格破壊が進んでいます。その流れが、飲食広告業業界にも来るのではと考えたんです。

つまり、飲食業界でも、格安広告や成果報酬型の広告が浸透していくのではと思いました。

当時、成果報酬型のビジネスモデルにより、アルバイト求人広告のリブセンスという会社が上場しましたが、飲食店の広告業界でまだ先駆者がいませんでした。そして、アルバイトを通して、飲食店のオーナーさんが困っている中で、何かできるんじゃないか、こんなことは出来ないか、といったことを周りの人に話していました。

●そうした中、ビジネスモデルを着想し、学生時代に会社を設立しています。準備期間はどの位でしたか?

2週間です。2週間の間に、ビジネスパートナーとお金が集まるといる奇跡的な状況が起こって、その流れで起業しました。それが、大学3年生の時です。

アルバイトを通して、飲食業界のことを研究し、飲食店オーナーさんの課題を把握できたのはとても良い経験になりました。

●アルバイトを通して、結果的に業界のリサーチをしていたということですね。

アルバイトでは、1日、100件は飲食店に電話をかけ、飲食店のオーナーさんの課題や悩みは聞いていました。しかし、その当時、会社経営の知識はほとんどありませんでした。今考えると、周りの色々な方々に支援して頂きましたし、とても恵まれていたと思います。

知人や母親からの出資の協力もありました。両親ともサラリーマンの家系ではなかったので、理解も得られたのだと思います。子どもの頃から、会社を立ち上げて、最終的に社長になることが夢でしたが、会社を立ち上げること以上に、中学生の頃、何をやるかを考える方が重要であることに気付けたことが、大きかったと言えます。

●会社設立後、これまでの苦労等を聞かせて頂けますか?

会社を立ち上げて、始めに着手したのは、システム開発でした。当時はエンジニアの知り合いもいませんし、システム開発の知識も全くありませんでした。

そうした中、システム開発を行う外部の委託会社を探し、システム開発を進めました。アプリ開発の他に、自社の管理機能や飲食店さんのデータベースや管理画面の開発等、数千万の投資となりました。

●システム開発以外にも、サービスの告知や登録して頂く飲食店の開拓もあります。

システム開発を進めた1年間は、提供できるサービスがありませんでした。サービスを説明する資料で飲食店向けに営業をしても、サービスがスタートしたら検討する・・ということで、アプリ公開時の登録店舗は、50店だけでした。それ以降は、サービス自体の認知を上げることと飲食店の営業に注力しました。

私の場合は大変有り難いことに、女性起業家、学生企業家ということで、取材も受けることも多く、メディアにも露出しながら、アプリの認知度も高まっていったと思います。

また、取材以上に、当時から私たちを支えて頂いたのが、ファンクラブ(エンジェル倶楽部)の方々の地道な活動です。

エンジェル倶楽部:途上国の課題を解決するクラウドファンディング型のファンクラブ。実際にチャリティ予約をすることや、テーブルクロスが広めるための宣伝・啓発活動をすることで、共にチャリティ予約の文化づくりを進めていく。

●ファンクラブもそうですし、テーブルクロスさんは、代理店制度等、ビジネスモデルとしての仕組みが整備されているという印象を受けました。

私たちの個々のプロジェクトは、全て過去の失敗経験があって成り立っています。

当初は代理店制度も無料で募集し、2ヶ月間で400の代理店が集まりましたが、飲食店を紹介して頂いた代理店さんは2件だけでした。代理店の管理コストや手間も掛かる中、代理店さんにも、私たちの事業への参画、コミットメントをして頂くためのハードルとして、加盟料金をお支払い頂く、現在の制度が出来上がっています。

●現在、代理店さんの規模は如何ですか?

220の代理店さんにご支援を頂いています。半数以上が企業の方々ですが、代理店を事業の一つとして取り組んで頂いています。定期的にセミナーを開催したり、個別に訪問し募集をしています。

●学生時代に事業を立ち上げ、サービスも順調に拡大しています。城宝社長の行動力や実行力、社会を変えたいというモチベーションやその原動力は何ですか?

私の中でも明確な答えは出ていませんが、時代的な要因があるかと思います。

私も含めて、私たちの世代は、お金以上に、日々の生活を通して、誰かの役に立ちたいという気持ちが強いのではと思います。同じ仕事をするのであれば、日々仕事に使っている時間が、誰かのために役に立つ仕事選びをしたいとう考え方の人が増えていると思います。

●自らがソーシャルビジネスを立ち上げていますので、周りの方々はそういった意識の方が多いかと思いますが、世間一般でもそう感じますか?

通常であれば、飲み会に参加したりすることは、自身の楽しみの他に、人脈形成だったり、キャリアを築くことの一環と考えていたのが、これまでの考え方だったかと思います。

そうした中、先日の飲み会で、今の世代は、飲み会にお金を使わなくなったという話になりました。なぜ、飲み会にお金を使わなくなったかって言うと、自己投資の意味や考え方が変わり始めたのではないかという結論に達しました。

自分がやりたいと思っていた事は、既にやっている人たちが世の中に出始めている。しかし、クラウドファンティング等を通して、その人を応援すれば、自身の自己実現につながるのではないかということです。

自己啓発にお金を使うのも、同じ想いの人への応援でお金を使うのも、同じ自己実現のためではないかという議論になり、その場にいた全員が共感しました。周りの同世代も含めて、そうした価値観への変化があります。

●城宝さんご自身のことではなく、同世代全体がそうだということですか?

その傾向は強いと思います。飲み代に数千円使うよりも、クラウドファンディングで同じお金を使う、そうした価値移行が進んでいることを実感しています。

●そうした考え方は、コトラーが提唱する、より良い世の中にするためのマーケティング3.0、自己実現のマーケティング4.0 とも合致します。

貴重な時間を使って自分が生きているのであれば、世の中に役立ちたいという気持ちは基本的にあります。仕事をするのであれば、楽しく誰かのために役に立ちたいと思っています。

●アプリ提供を通してのビジネス成果を教えて頂けますか?

現在の契約店舗数は約3,000店、40万件のアプリがダウンロードされ、累計の給食支援数は、22万件を超えました。

●ソーシャルインパクトの観点から22万件の給食支援数は、KPIの一つになるかと思いますが、数値の規模自体はどの様に捉えていますか?

当初、20万件は2年目に達成することを計画していました。現在、会社は5年目を迎えますが、2020年には4,000万件を目標に掲げていましたので、今後1年間で200倍の予約を獲得する必要があります。

●今後、計画を達成するための秘策や計画はありますか?

従来の飲食店予約のサービスに加えて、訪日外国人の方々を対象に、食関連の体験型アクティビティの予約サービス「TOKYO BY FOOD」をスタートしています。

●具体的にはどの様な体験ですか?

食に関することですので、料理教室や日本酒の飲み比べ等になります。テーブルクロスのサービス同様、予約人数に応じて、給食支援を行います。

2020年のオリンピックに向けて、訪日外国人の方々も増えますので、サービス利用者拡大の重要な戦略の一つです。

●体験型も食に関することですね。

私たちはアプリを通して、食に関するプラットフォーマーになりたいと考えています。

現在、「TOKYO BY FOOD」は名前の通り、東京エリア限定のサービスですが、2019年6月からは、「BY FOOD.com」という名称に変更し、全国にそのサービスを拡げていきます。将来は食に関するコト消費をグローバルで展開していきます。

●最後に、今後の夢や展望をお聞かせ下さい。

これまで途上国の支援を進めてきましたが、事業を通して、国内の社会課題も見えてきましたので、今後は、寄付先を拡げていきたいと考えています。日本では、個人が寄付をしても、その寄付がどう社会に役立っているのが見えにくいという課題があります。その辺りが、日本で寄付文化が拡がらない要因であると思います。

私たちは、プラットフォームを通して、利用者の方々が寄付先も選択できる仕組みを作りたいと考えています。また、これまでは海外の支援でしたが、国内外問わず、子どもたちの支援を行ってきたいと思います。

サービスを通して、私たちは特別な空間を提供していると考えていますので、さらに特別な寄付の仕組みを提供していきたい思います。私たちが提供するプラットフォームが成長するだけではなく、これからも社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。

インタビュー・テキスト エンゲージメント・ファースト 萩谷 衞厚

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