Social Good Company #24 特別編:中小企業庁「シンギュラリティ時代の産業革命とは?」

日本国内の中小企業の企業全体に占める割合は、実に99.7%。所属する従業員数も7割弱を占め、中小企業はまさに日本を支え、地域経済や雇用を担う重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

今回のSocial Good Companyは、新春特別企画として、中小企業庁 幹部の方に、ソーシャル・グッドやCSVをキーワードにインタビューの機会を頂きました。

・生命体と技術を組み合わせ、健康や精神的な安定を提供することで、共感を生み購買行動にも変化が生まれる。そうしたことを実現することが産業革命である

・中小企業は、生産性向上と併せて、CSVの流れを経営に融合させていくことが、中小企業の成長を促す

・ソーシャル・グッドな企業は、ビジネス面でも強い企業であることへ意味を転換し、そうした企業に人や資金等のリソースが集まるループを作る必要がある

<インタビューにご協力頂いた方> 中小企業庁 次長 前田 泰宏 様


●社会課題解決の観点から、現在の中小企業庁のお取り組みを教えて下さい。

産業政策を考える上で、社会的な課題の解決が重要になりますが、いくつかの切り口があると思っています。

まず、社会的な課題を解決することは、マーケティングそのものであるということです。課題があるということは、解決するニーズがあるわけで、それこそがマーケティングであり、ビジネスであるということです。

つまり、ソーシャル・グッドな企業は、ビジネスの面からも強い企業であることを意味することに、転換しなければならないと思っていますし、そうした企業に、人や資金等のリソースが集まるループを作る必要があります。

また、社会課題は、大きなものもあれば、小さなものもあります。

これまで、業務を通して、海外17ヶ国に行きましたが、グローバルでは、その地域ごとに小さな課題もたくさんあります。小さな課題の解決は大きな会社では、採算が合わないので、解決することは難しい。

小さな課題をビジネスとして解決するには、中小サイズの企業が適しています。小さな課題解決を解決し、関連する課題解決を積み重ねることによって、大きな課題解決に繋がるということも考えられるのではと思っています。

●中小企業は、社会課題解決の担い手としてその役割を果たせるということですね。

繰り返しになりますが、ソーシャル・グッドやCSVは、社会貢献ではなく、ビジネスでありマーケティングの話であるということ、そして、大企業では出来ない、身近で小さな課題を解決するのは、中小企業であり、ベンチャー企業の役割が重要ではないかと思いました。

そして、中小企業に対する政策に、CSVをどう絡めていったら良いかというのが、今後のカギになると考えています。

そうした時に、応援すべき中小企業は何か? そして、良い会社とは何か?という事です。経営基盤がしっかりしているということも重要ですが、私は、社会的課題解決の役割を果たしている会社を応援したいと思っています。

様々な政策を検討する上で、良い会社の支援を強化することが重要となります。

つまり、政策支援を行う対象として、グッド・カンパニーと言われる会社を評価し選別していくことは出来ないだろうかと常々考えています。

中小企業は、生産性向上と併せて、CSVの流れを経営に融合させていくことが、中小企業の成長を促すと考えています。

また、日本もそうですが、特に欧米では、若者の会社を見る目が相当変わってきているのではと感じています。規模が大きくて有名な企業を目指すことは立派なことですが、そうした会社に入社してどこまで活躍できるのか。

つまり、社会のために自分がどれだけ貢献できているのかを考えると、小さな企業規模やソーシャル・ベンチャーと呼ばれる企業を選ぶ若者が増えているということも納得できます。

世界の潮流は、ビジネスと地域コミュニティとの融合に焦点が移ってきているのではと思っています。

一方で、人生100年時代を迎える中で、企業に勤め退職した後、自分はどう生きるかを考える必要があります。ビジネス・パーソンとして経験を積む中で、若者とは違った観点から社会に貢献したいという意識も強まると思っています。

●私たちも定期的にCSVや社会課題解決に関するアンケート調査を実施していますが、社会課題に最も関心ある年齢層は、10~20代と50~60代との結果が出ています。

50代、60代以上の層は、リターンにはあまり拘らずに、自分自身が社会に役立っているという実感を伴う取り組みを行うことが重要になるでしょう。また、そうしたことを持続可能な取り組みとするためには、ビジネスとして取り組まなければ長続きしません。この様な考えを第二の人生として、シニア世代にどう組み入れていくかがポイントです。

ジェロントロジーの側面からもそうした社会へ転換することは重要です。高齢化社会を迎え、医療費の増大や独居老人の増加等、社会的コストも増える中で、そうした社会を実現することで、シニア層の社会的コストは下がると思っています。

●そうした社会の受け皿として中小企業が果たす役割は大きそうです。

若者層とシニア層、二つの層の受け皿として、CSVを進めるソーシャル・グッドな中小企業が増えてくれば良いと考えています。

さらに重要なことは、そうした企業が生み出す商品やサービスを購入する消費行動が実現する社会です。

●弊社では、ANAさんと一緒に、ソーシャル・グッドな商品を集めたECサイトを運営しています。従来の商品と比べて価格が高い商品でも、ソーシャル・グッドな切り口を訴求することで、販売面で健闘している商品もあります。まだまだこれからですが、生活者の消費行動も少しづつ変化していると実感しています。

最近ではクラウド・ファンディングもサービスも増えてきましたが、そうした共感性により、ビジネスを支えていくことはとても重要です。

クラウド・ファンディングであれば、お金を出すことの決定権は消費者にありますが、政策であれば、その決定権は基本的に行政にあります。しかし、今後の国の政策による企業の支援先も一般消費者の投票によって決めてもいいわけです。

そうした流れは、結果的に消費行動を変えていくことにも繋がります。また、一般消費者は資金の供給者であり、購買者でもなり得る、そうした仕組みを作っていくことです。

また、ソーシャル・グッドな企業を拡げるには、メディアの役割は非常に重要です。

●クラウド・ファンディングのサービスでは、プロジェクトを海外に発信して、グローバルで資金を集める動きも進んでいる様です。共感性を生むために企業が出来ることはなんでしょうか?

文字情報も重要ですが、動画を活用することによって共感性が高まると思います。今後は中小企業の政策にも、動画を活用することにチャレンジしていきたいと思います。

●具体的にはどういった施策ですか?

これまで役所は企業に対して、申請等、文書で情報を求めてきましたが、動画の活用も検討しています。動画の方が、経営者も熱く語ることができますし、映像を通せば、経営者の本気度も伝わります。伝える手段として、そして、共感の幅を拡げることでは、動画の可能性は大いにあると思います。

これまで役所は企業に対して、申請等、文書で情報を求めてきましたが、動画の活用も検討しています。動画の方が、経営者も熱く語ることができますし、映像を通せば、経営者の本気度も伝わります。伝える手段として、そして、共感の幅を拡げることでは、動画の可能性は大いにあると思います。

クラウド・ファンディングの有効活用に加え、役所への申請も動画を認めることも検討しています。

●最後に、ご自身が描く、未来の産業像を教えて下さい。

今後は、技術の進歩に加えて、技術に対する信頼性や揺らぎといったことも顕在化していくでしょう。すでに、AIが進化しシンギュラリティを迎えることで、私たちの仕事が奪われたり、進化しすぎた技術に対して、不安を覚える層もいることは確かです。

一方で、自然や環境、生態系等、人間の生命体としてのチューニングも必要になるでしょう。

共感をパワー・ワードとするならば、単なる技術だけが進化した未来と、ヒトとして生命体と技術とを組み合わせたセットとしての未来を考えた時に、共感性が高いのは後者であると思います。

そして、そうした考えが、今、世界で注目されるSDGsの取り組みに繋がっていると思います。

生命体と技術が組み合わせることにより、健康や精神的な安定といったものを提供することで、共感を生み購買行動にも変化が生まれる。そうしたことを実現することが産業革命であると考えています。

一般的に生態系は機械的なものは排除されますが、これからの産業革命は、機械的なものも生態系が共存し、お互いが存在を認めること、単に自然に還るということではなくて、自然界の生態系と人工物がより融合された世界となるでしょう。

私自身も効率性や利便性だけではなく、むしろ、非効率で非合理なものを選択していると感じています。

■インタビュアー・テキスト
エンゲージメント・ファースト 萩谷 衞厚

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