正解のない問題に取り組むスキルを育む Visual Thinking Strategy

アート作品を見ることで「正解のない問題に取り組む力」を磨くことができる。さらに、作品から自ら問いを立てる力と自分なりの答え等を出す力、つまり 「問題発見能力」と「課題解決能力」を伸ばすことができる(本書より)

最近、書店で平積みされている、ビジネス×アートをテーマにしたビジネス書。同様のテーマを扱う多くの本の中から、今回の記事の題材に選んだ書籍は、「なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館にいくのか?」。
選んだ理由は、冒頭にカラーのアート作品が掲載され、本書の後半には、それぞれの作品を用いた、対話鑑賞法のシミュレーションが8事例 挙げられていること。そして、ビジネス×アートが注目される理由が手軽に習得できそうだから。
本書では、美術鑑賞法の一つである、ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー(以下、VTS)の手法や有効性が分かりやすく解説され、その鑑賞法の実践書と言えるでしょう。

VTSとは?、その効果とは?

VTSとは、1980年代にニューヨーク近代美術館で、当時、教育部長を務めていた、フィリップ・ヤノウィン氏が中心となって開発された美術鑑賞法。
その鑑賞法の特徴は、以下の2点。

・鑑賞に、作品名や作者名、解説文といういわゆるキャプションに載っている情報を用いないこと

・1つの作品あたり、おおむね10分以上、純粋に作品を見ることだけに費やすこと

VTSで重視されるのは、「作品そのものへの理解」だけではなく、作品を見て、自分が何を感じ、何を考えるか?
効果として本書で挙げられるのは、観察力、批判的思考力、言語能力、問題発見力、問題解決力 との事。

VTSの手法による対話型鑑賞法とは?

対話型鑑賞法は、少数のグループにより、1つの作品を見ながら発見したこと、感想を話し合い、コミュニケーションを行う鑑賞法のこと。グループには、1名のファシリテーターがコミュニケーション全体の交通整理を行います。そこで、ファシリテーターが参加者に対して用いる基本的な質問は、以下の3点との事。

・この作品の中で、どんな出来事が起きているでしょうか?

・作品のどこからそう思いましたか?

・もっと発見はありますか?

最初は作品を見て見つけられる事実、つまり「要素」を多く取り出し、「要素」を重ねていくことでそこから新たな「解釈」を導き出し、鑑賞を深めていく。1つの「事実」から、複数の「解釈」を導き出すことも重要なポイントの一つとの事。

本書 P.70より

こうしたVTSのポイントは、普段のビジネスでの共通すること。私自身、ここ4年間継続して、ある金融機関の特定の組織に対して、ヒアリングやアンケートを通して「事実」を把握した上で、「課題」を抽出し、課題解決のための解決策や提言を取りまとめるコンサルティング業務を行っています。まさにこの業務プロセスは、VTSのプロセスそのものと言えます。

実体験を通して

実は昨日、私自身も、グローバルコンパクト・ネットワーク・ジャパンのCSV分科会の課外活動でVTSを実践する機会を頂きました。
担当のファシリテーターの方が鑑賞会で選択したアート作品は、以下の3点。

・鉄を原材料とした立体のアート作品

・鳥が描かれた幻想的な絵画作品

・抽象的な現代アート作品

今回の対話型鑑賞法を通して、1つの作品を15分程度の時間をかけてじっくりと鑑賞したことは、人生初の体験となったこと、また、厳粛な美術館の環境の中で、グループディスカッションをしたことも新鮮でしたが、一番の発見は、作品を見て自身が解釈した「事実」以外にも、グループ内で実に多くの「事実」が抽出されたことと言えるでしょう。

ビジネス×アートの有効性

先程のコンサルティング業務を改めて振り返ってみましょう。アンケートやヒアリングを通して抽出された顕在的な課題は、恐らくこうした要因に起因するものだろうといったことを想定し、その解決策を導き出していましたが、それは、これまでの経験や知識から、パターン認識により、導き出していたと言えます。
今回の対話型鑑賞法を通して、感じたことは、1m四方程度の絵画でも参加者によって、着目する「事実」が異なり、多様な「解釈」が抽出されたこと、そして、さらに対話を通して、自身の見方も変わり、新たな「解釈」が生まれたことが最も興味深い出来事となりました。
最後に、VTSにより養われる能力の一つに挙げられる言語能力に関して、印象に残った本書のセンテンスを紹介して終えたいと思います。

アート作品の情報が最初に入る場所は右脳になります。ということは、たとえば、「アート作品を見て、わかったことを言葉に出してください」と言われた場合、いったん右脳に入った情報を左脳に送って、それから言語化しなければならないわけです。
これは、脳の作業としては二度手間になっているので、複雑な処理の仕方をしていることになります。しかし、だからこそ、アート作品の鑑賞を深めていくために、意識的に言語化することが大切なのです。

Staff Blog:萩谷 衞厚

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