デンマークでエンゲージメントを学ぶ 第4回 デザイン

今回の目的はデンマークでの教育の考え方や仕組みを弊社に取り入れることと、北欧のデザインを学ぶことでした。もちろんデザインといっても広義な意味でのデザインです。

デザインの語源はデッサン(dessin)と同じく、”計画を記号に表す”という意味のラテン語designareである。

また、デザインとは具体的な問題を解決するために思考・概念の組み立てを行い、それを様々な媒体に応じて表現することと解される。日本では図案・意匠などと訳されて、単に表面を飾り立てることによって美しくみせる行為と解されるような社会的風潮もあったが、最近では語源の意味が広く理解・認識されつつある。形態に現れないものを対象にその計画、行動指針を探ることも含まれ、就職に関するキャリアデザイン、生活デザイン等がこれにあたる。(wikipedia)

デンマークを訪問して改めてデザインの意義とその重要性を認識しました。あらゆるものがしっかりとデザインされているのです。北欧家具は名ですが、例えば政治や教育のシステム、都市計画、環境計画などなどがデザイナーによりデザインされており、それが心地よい空間や気持ちを生み出しているのだと思います。

今回訪問したコペンハーゲンから3時間はなれたKoldingにあるデザイン大学「Dsign School Kolding」では、ファッション/宝飾デザイン、インダストリーデザインに加えてコミュニケーションデザインが学科として存在し、卒業後役所系などに就職して様々な領域でデザインの仕事をしているとのことでした。デザインとはそこで関係する人、環境が調和して心地よく、持続的に生活していく道筋を設計し、その具体的な見える形としての家具や建築、生活雑貨などはありますが、重要な役割としての設計が実に広範囲なのです。そしてデンマークにおけるデザインとは、まさに彼/彼女達が信頼しているシステム、民主主義を実行するための手段でもあるのです。幼少時から教育で身についている民主主義は「多様性の尊重」「透明性の担保」「持続可能性の追求」なのですが、それらがベースとなって、あらゆるものが設計・計画=デザインされ、ここちの良いものが出来上がっているのです。繰り返しますが、これは家具や雑貨、建築だけでなく、制度設計や法律設計にも活かされているのです。

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コディング大学でのミーティング。右は学長で、元文化庁長官も勤めたエリザベス

Dsign School Koldingにおいて全ての学科に共通しているデザインの4Pがあります。そして、この4Pはデンマークにおけるデザインのキーになるワードです。

  • People : 人とのエンゲージメント
  • Planet:地球(環境や生物)とのエンゲージメント
  • Play:遊びから学ぶ
  • Profit:上記からビジネスを考え、生み出す

これらをベースにしながら服飾をデザインしたり、製品をデザインしたりしており、服飾素材などはサステナブルな素材の研究も進んでいます。例えば海藻から作り出した素材、太陽光を吸収し電力を産む素材での服を作ったりとかなりラディカルにやってます。単に「見栄え」としてのデザインではないのです。そこには「意義」が存在しているのです。

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Play は実に象徴的です。森の幼稚園がそうだったようにデンマークには「遊び」というものが非常に重要な位置を占めています。遊びからの学びを大切にしているからです。そうそう、ここはレゴの国デンマークなのです。大学とレゴは共創関係にあり、遊びの部屋があり、そこで子供達が遊ぶ様子を観察して、ビジネスに活かしているのです。レゴのシリアス・プレイは、今やビジネスワークショップでの定番の一つですが、遊びという右脳的な活動の中でビジネスを考えるという、まさに「デザイン思考」そのものなのです。日本における美術系大学にもこのような考えを取り入れ、よりデザインをビジネスに取り入れることがもっと進めばとの思いを強めました。

前日にはエリザベス氏をご紹介いただいた北欧最大級のブランド・デザイン会社「Kontrapunkt」を訪問しました。この会社はLEGOやカールスバーグなどのロゴやタイプフェイスなどのブランディングなどを手がけています。彼らは民間企業ばかりでなく地下鉄や郵便事業などの公共機関のデザインも手がけており、コペンハーゲンの街中には彼らがデザインしたロゴや空間が溢れています。日本でもビジネスを展開しており、日産、田崎真珠、デンソーなどのグローバル・ブランディングも手がけています。実は弊社メンバーズもこの4月にブランド・アイデンティを一新したのですが、彼らと弊社のデザイナーの共創によるものです。

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彼らはグラフィックだけでなく空間デザインもしており、彼らが手がけた電力会社Ørstedは事業ドメインの変化(化石エネルギーから再エネへ全面移行)にともなうコミュニケーションを全て手がけており、そのデザイン・ワークにより全く違う事業ドメインへの移行もスムースに行われたとのことです。是非こちらをご覧ください。Kontrapunktは約80名のデザイナーを抱えており、共同創業者のBo Linnenman氏は大変日本びいきで武蔵美術大学の客員教授もやっていらっします。彼らが生み出す高品質なデザインはまさにデンマークのデザインそのものでした。

彼らのValueは下記の6つです。

  • Stay a student:いつまでも学ぶ
  • Pursue excellence:卓越を求める
  • Bet on better:より良い方にかける
  • Diagnose, then prescribe:しっかりと観察・診断してから規定する
  • Value differece:違いの価値化
  • Involve:巻き込む、共創

我々も彼らとの共創を通じ感じたのは、一緒に作り出すのだという手法です。そのためにクライアントとのインタビューやワークショップにはかなりの時間をかけ、エンゲージメントを高めながら、最終的なアウトプットを出していきます。また、彼らは戦略チーム、グラフィック・チーム、クライアント・エンゲージメント・チームがクライアントと一緒になって共創していきます。そのためオフィスにおけるチーム・ビルディングはとても大事にしており、何かあるとすぐミーティングができる環境になっています。ミーティングにはコーヒーと果物やお菓子、そして何故か人参の酢漬け(これはデンマークではポピュラーのようです。)に昼間でもロウソク!

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ランチはケータリングが用意され、日頃話す機会のない社員同士が食事を取りながら雑談や仕事の話をしていました。(余談ですが、デンマークはオーガニック野菜が主流なので美味しくて健康にもよい!)ただし、だらだらとするのではなく食事も30分程度で、外でランチをとるのは生産性にもかけるという考えもあるようです。いづれにしても8時から16時までしっかりと集中して働き、16時きっかりにプライベートの時間に突入していきます。プライベートの充実が幸福度ランキング上位国の理由であることは間違いないです。よく学び、よく遊び、よく仕事する、がしっかりとデザインされ、実施されている国でした。

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これからの世界はものが溢れ、若い人たちを中心に価値観が変わっていく中、人間らしさに根ざしたデザインが付加価値であり、受け入れられるものになっていく、すなわちそれを作る側もそうなっていかないと顧客とエンゲージメントできないのだと痛感しました。

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