「知らざれる競争優位」フリードヘルム・シュバルツ

知らざれる競争優位

副題に「ネスレはなぜCSVに挑戦するのか」とあるように、世界最大の食品・飲料企業であるネスレが「共有価値創造(CSV)」経営を実践するに至った経緯や考え方を、CSV経営を提唱した当時のCEOピーター・ブラベック(現会長)について書かれた本であり、CSVについての最良のテキストの一つと言えます。

ピーター・ブラベックは17年間の中南米に於けるネスレでのビジネスを経て(本人は現場にこだわっていたが)本社に戻り、その後ネスレCEOに就任しました。彼の企業経営の考え方は「会社が株主の資本投資の受託者として投資家に長期に渡って利益を生みだすためには、ネスレが社会に利益をもたらす会社でなければならないと考えており、企業が本当に試されるのは長期にわたって社会に利益をもたらす会社でなければならない。」と言うことでした。この考えに基づき、2006年にはポーター、クラマーに「ネスレが中南米で実践する企業の社会的責任の概念」と「ビジネス」についての検証を依頼しました。そしてそれらの活動がバリューチェーンの各段階での共通価値を産み出し、継続的なビジネスの拡大、維持に繋がっていることを証明し、2007年の「CSV報告書」で発表しました。その後、ポーターとクラマーは2011年ハーバード・ビジネス・レビューで「共通価値の戦略」を発表しました。

彼は「企業は社会に何らかの還元をしなければならない」という言葉に「苛立ち」を覚えるとあります。CSRにありがちな慈善活動への投資は経営の仕事ではなく、あくまでも企業が使うのは株主のお金(投資)であり、企業としての合理的な投資しか正当化されない、と考えているからです。つまり何かを奪った見返りとして還元(寄付)をするということではなく、あくまでも投資は共通価値を生み出さなければならないと考えているのです。

ネスレは現在42の社会課題解決目標を持ち、その進捗状況はCSV報告書「Nestlé in society 共通価値の創造と 2016年 私たちのコミットメント」で見ることができます。CSVであることの真骨頂は、財務指標である売上と利益と並び、同じレイヤーで非財務的な指標である42の課題解決状況を定量化して明記していることです。2016年には、この42の課題解決のロードマップはSDGsともより密接に連携し、より意欲的にCSV経営を推進しています。

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このレポートの中で投資家に対してCSV経営は長期的な利益を生みだす手法であり、また、「企業や投資家 が共同で、持続可能な社会の創造に大きな貢献をする 機会が生まれ、彼らが挙げたさまざまなテーマについ て、投資家の皆さまと対話を持つ機会を楽しみにして おります」としています。まさにこれこそ株主との共通価値の創造といえるでしょう。

CSVは企業の経営哲学であり経営手法でもあります。持続可能な社会(生活者、企業、投資家、地球)創造にまったなしの状況、ネスレの壮大な試みが成功し、他の企業にも広がることを心から祈ります。

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